佐藤賢一 『ペリー』 [読書]
志あらば助けたい、できるかぎり役に立ちたいという衝動も、ペリーとしては当然の感情だった。ああ、ジャパンの人々が一通りでない可能性を感じさせているならば、なおのことだ。そう遠くない将来において、アメリカのライバルに成長するとしても、それこそチャイナ貿易のためのアメリカの中継地であるどころか、イギリス、フランスと並びながら、チャイナ市場における競争に食いこんでくるとしても、やはり協力しないではいられない。
それがアメリカの精神だからだ。
(「第3部 ジャパン」より)
佐藤賢一さんの「ペリー」は、黒船来航、日米和親条約締結を
ペリー提督の立場から描いた小説である。
これまで私は、黒船に代表される西洋文明の工業力・軍事力を背景に
開国を迫られた日本という視点のみで、日本の開国を巡る歴史を見ていた。
学校での歴史の勉強はそれで十分だったからだ。
しかし、この小説は、なぜペリーは日本を目指したのかを描きながら、
世界の中での日本の開国の意味を再考するきっかけを与えてくれる。
その後の世界はどう動いたか、明治維新以降の日本は、
対欧米というだけでなく世界においては何をしてきたのか・・・。
そういうことを考えると、TPP(環太平洋連携協定)への参加について、
わが国が判断を迫られる中で、「ペリー」は非常に含蓄のある小説と言えよう。
コメント 0